頭上とうじょうをかすめゆく雲 夜だから ひとつのこらず暗雲だろう

靴下を、服をズボンをなげすてて泣いてるような十月の部屋

水底をさかなは眠る十月のこんな季節の出立ちじゃない

持てあますほどの温度を授けつつ花瓶に蝋の花ひとつ挿す

錠とざすたびできあがるまひるまの密室としてああお手洗い

独房のような部屋だが一本のさくらが散ってゆくのが見える

 

あたらしく住む街だからとりあえず迷子のように暮らしています

 

くたくたの生活 くたくたになった服をくたくたのままつり下げる

 

かりそめの主従となって日雇いのわたしをバイトの君が連れゆく

 

 

なにもかもおさめるための入れものとしてこんなにもでっかい、春は

 

曲芸飛行、くじらが海を飛びだしてぼくはからだで拍手している

 

さみしいということばあるさみしさの、さみしい、きみの漢字練習

 

 

空からの声が遠くて(We have a gift for you.)みな雪になる

 

生きていく理由をつよく考えて春と思えば春を生き抜く

 

くらやみに僕が入っていったので僕入りのくらやみとなります

 

きみたちのきみにぎりぎりふくまれていなそうだから俺は眠るが

 

埋葬の手段としてのおにぎりのひとつひとつにのりを巻くこと