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壁にある垂れてこはれてゆくころのドライ・フラワー 真夜の民放
つり革に手を手首まで差し込めるわれら
荒地に寄り集ひたるやうな人間が何人きたつて荒地だらうが
あながちたがふとも思はざる鰓と書く魚の思ふところを剥がし
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嬰児のつかれはてたるまどろみの胸元は拍動を聴く壁
こんなにも追いつめられて言葉ってかにが吹き出す泡みたいだな
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独房のような部屋だが一本のさくらが散ってゆくのが見える
あたらしく住む街だからとりあえず迷子のように暮らしています
くたくたの生活 くたくたになった服をくたくたのままつり下げる
かりそめの主従となって日雇いのわたしをバイトの君が連れゆく
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夏の尾のように花火を持っている なにかをつかまえたかったのだが
天国へちかづくように階段の音はしずかに廃墟にひびく
薔薇園にみずもたらして天使たるわたくしひとり薔薇にほほえむ